硫黄島からの手紙

この映画は太平洋戦争末期、小笠原諸島の南にある硫黄島の激戦を
クリント・イーストウッドが監督でアメリカ側から見た「父親たち
星条旗」と日本側から見た「硫黄島からの手紙」の双方から視点
から見たみたものを2部作としたものだ。「父親たちの星条旗」は
普段映画へのアンテナをたてていないので見逃してしまったがこの
日はたいがとおいちゃんと3人で見てきた。

今から見る人もいるので詳しくは書かないけどとてもよくできてい
ると思う。日本側からの視点とはいってもハリウッド映画をあのよ
うに思い切って全部日本語にしてしまうとは驚きだった。また、今
まではアメリカの映画を見ても日本に対する認識なんてでたらめも
いいとこ、「パールハーバー」なんて戦争を決断する大本営会議が
青空の下で後ろでは子どもが走り回っているようなデタラメだった
からなあ。今回のクリント・イーストウッド監督はいろいろな意味
で真面目に作っていてお見事だ。

しかし、徹底して一兵卒の目線からとらえているせいか硫黄島の戦
闘の背景や様子が今まで戦記を読んだことのない人にはいまひとつ
わかりづらい気がするので参考までに。

★あんな月面のような硫黄島アメリカが多くの犠牲を覚悟してま
で占領しなければならなかったのかがまったく描かれていない。

これについてはアメリカがサイパンを占領し、そこから日本本土空
襲へB29が出撃するが護衛戦闘機なしでの出撃は被害が多すぎる
ため航続距離の短い護衛戦闘機が発着できるよう日本本土に近い硫
黄島に基地を作ることが必要になったためなどの理由から(他にも
いくつかあるけど)占領することになった。

日本軍も島嶼を防衛するには水際に陣地を構え上陸した敵兵を海に
追い落とす作戦をとってきたが、研究済みのアメリカ軍は上陸する
前に空母艦載機からの拠点への空襲と何日にも及ぶ艦砲射撃で防衛
陣地を壊滅させてから上陸してくる作戦をとっていた。日本軍もこ
れに対抗するべく硫黄島では水際での防衛は捨て洞窟に立てこもっ
ての戦いになった。アメリカ軍は島の形が変わるほどといわれるほ
どの艦砲射撃を何日も行ってから上陸してきたと思うのだがこの映
画ではあまりふれられていない。

★島の地名の説明がないのにどんどんでてきて位置関係がわからな


映画を見る前に擂鉢山と上陸地点、元山飛行場周辺と北の最終陣地
の位置関係は把握しておいてください。

★日本軍は2万人以上の死者、アメリカでは6千人の死者と2万人
の負傷者があり、戦闘も1カ月以上続いていたはずなのだが、1週
間くらいしか経過していないような感じがする。

狭い硫黄島で両軍あわせるとすさまじい数の兵隊が戦ったのだから
もう少し人数の多さの場面があればよかったかな。また時間も実際
には1カ月以上戦闘が行われていたことを覚えておいて見て下さい。


戦う相手にも親があり、相手の親も自分たちと同じく我が子の安全
を願っていることを監督はうまく描いている。今現在アメリカとイ
ラクでこういう映画を作ったら非難されそうだが、硫黄島の戦いを
このように描くことによって反戦的なことを監督は訴えているよう
な気がする。戦争の悲惨さを言葉や映像で必要以上に表現するので
はなく、史実を忠実になぞる中にこのような場面をちりばめたこの
映画、最近の中ではおいらは1番だと思います。

この2部作、アカデミー賞にエントリーしているようだが高い評価
がされるといいな。みなさんにも自信をもってお勧めします。

父親たちの星条旗」も見たいな。どこかでまだやっていればいいけど。