果てしなき山稜―襟裳岬から宗谷岬へ



志水 哲也 (著)

冬の襟裳岬を一人で北へ向かって歩きはじめる男がいた。彼は敢えて厳冬の日高山脈―雪と風がすべてを支配する極寒地帯を越え、うねるように広がる石狩山地を春に抜け、果てしなく続く北見山地をつき進み、六ヶ月後に宗谷岬に辿り着く計画だった。妻を東京に残し、単独で白い山並に半年間も立ちむかわせたものとは・・・・・。登山とは、人間が生きるとは、を問う話題作。

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今でこそNHKの山岳番組に出演して脚光を浴びたり、写真家として大きな名声を得ている志水さん、この旅を始めた17年前には、自分は何をするべきなのか大いに迷っていたのだろう。文章の中にもそういう部分が数多く見受けられるね。

テレビなどで拝見すると、優しそうな風貌の中にも強い意志も感じられ、志水さんの辿ってきた足跡は、曲がっていなくて真直ぐな硬派そのものだね。しかしこの本では、自分で孤独を求めた旅なのに、時には人恋しくなるなど自分の弱さを素直に吐露したり、人とのふれ合いを大事にしたり、『人 志水 哲也』として魅力溢れる本だな。

このころの写真を見ても、技術的なことはおいらはあまりわからないが、『上手さ』というよりも『山の魅力』が充分伝わってくる、心のある写真に感じるね。

当時より、写真も文も、才ある人だったのだな。