叛旗は胸にありて



犬飼 六岐

冴えない中年浪士、熊谷三郎兵衛。腰には竹光、傘張りで糊口をしのぎ、同じ長屋の住人からは「くまさん」呼ばわりされる始末。このままそっと一生を終えるはずが、近所の浪人の誘いに乗ったばかりに幕府転覆計画に巻き込まれてしまい…。胸にくすぶる武士の誇りをかき集め、江戸・京・大坂を駆け抜ける!浪人たちの反乱「慶安の変」を新解釈で描く!大型新人が放つ本格時代長篇。

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慶安の変』がすぐわかる人はかなり歴史に詳しい人だね。おいら『由井正雪の乱』は知っていたけれど、この2つが同じ事件とは知らなかったよ。
この事件は徳川3代将軍家光の死後のころ、由井正雪が幕府転覆を計画したが事前に漏れて未遂に終わり、由井正雪や『張孔堂』門下生などは自刃したり捕縛されたという。

由井正雪軍学塾『張孔堂』は、一時は3000人もの門下生を抱えたとされる。門下生の中には大名の子弟や旗本なども多く含まれていたというのだから、由井正雪という人物はさぞかし大きな魅力があったのだろうな。
物語に出てくる宝蔵院流の丸橋忠弥、金井半兵衛、熊谷直義などはすべて実在の人物だったようだ。

物語は展開も早く、『くまさん』が変わっていく様も面白い。
この事件を取り扱っているのだからハッピーエンドはありえないのはわかっているけれど、それにしても最後は悲しすぎる。誰一人幸せにはなっていない。読後感は虚しいものになってしまいました・・・