白き嶺の男



苛酷な雪山の中で極限に挑んだ男・加藤武郎。伝説のクライマー
をモデルに、山に人生を賭けた男たちの熱い友情と生きざまを描
き出す山岳小説集。新田次郎文学賞受賞作。

主人公加藤武郎は、作者あとがきよると新田次郎の『孤高の人
のモデルとなった加藤文太郎を充分に意識して書かれたという。
「もう一人の加藤の物語」だそうだ。

加藤文太郎の『単独行』は持っていて何度も読んだけど、加藤
文太郎ってクライマーだっけ?(w まあいいか。

谷甲州さんの本は初めて読んだ。山を実際にやる人らしく情景
は充分伝わってくるが、日本の山岳小説には多いパターンの話
話なのだな・・・
たしかに、「65才の中高年の夫婦が、老後の不安、嫁との軋
轢、持病、膝の痛みと戦いながら日本百名山を完登する」なん
て物語にもなりそうもないけれど、それにしてもこのような設
定の山岳小説はいくつもあった気がするなあ。

おいらが読んだ山岳小説で多いパターンとしては、

まずは谷川岳か滝谷の登攀シーンから始まる。八ヶ岳のシーンも
多い。

主人公はアルパインライミングで天才クライマー。
日本の山岳会では異端児。山にすべての情熱をつぎ込む。定職に
はついていない。

やがて日本ではあきたらず、活動をヒマラヤに移す。

エベレストかK2で主人公や主人公に近い人が無謀とも思える果敢
なアタックをかけて生きるか死ぬかしてしまう。

おいらにとっては山は、普段生活していくための潤いだけのものな
ので己の命を賭けてまでのアタックはなかなか理解しがたいものだ
けれど、すべてを賭けているからこそ物語になるし、読む人も非日
常の話なので惹きつけられるのだろう。

今から約25年ほど前に、日本でも有数の天才クライマーだった人
が厳冬期エベレストを登頂したあと、下山中に遭難死したけれど、
そのとき一緒に遭難死したのはおいらと同姓同名字も同じ人。
おいらは山は大好きだけど、山では絶対死にたくないなあ。おいら
は老衰で死ぬと決めているからなー。