チャイルド44

トム・ロブ スミス



スターリン体制下のソ連。国家保安省の敏腕捜査官レオ・デミドフは、あるスパイ容疑者の拘束に成功する。だが、この機に乗じた狡猾な副官の計略にはまり、妻ともども片田舎の民警へと追放される。そこで発見された惨殺体の状況は、かつて彼が事故と遺族を説得した少年の遺体に酷似していた…。ソ連に実在した大量殺人犯に着想を得て、世界を震撼させた超新星の鮮烈なデビュー作。







少年少女が際限なく殺されてゆく。どの遺体にも共通の“しるし”を残して―。知的障害者、窃盗犯、レイプ犯と、国家から不要と断じられた者たちがそれぞれの容疑者として捕縛され、いとも簡単に処刑される。国家の威信とは?組織の規律とは?個人の尊厳とは?そして家族の絆とは?葛藤を封じ込め、愛する者たちのすべてを危険にさらしながら、レオは真犯人に肉迫してゆく。CWA賞受賞。

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『2009年の評価の高い本を読んでみよう第三弾』。

なるほど、これは面白い。読み始めたのがたまたまものすごく寒い日の夜だったのだが、そんな日に読むにはうってつけのシーンからこの物語は始まる。凍てつく寒さの光景を想像できる文章で、読んでいても自分の吐く息の白さと息をするのも止まるような緊迫感で最初の数ページから引き込まれてしまったね。

さて、過激な性描写や凄惨なシーンは大嫌いのおいらだが、この本は際どいところでギリギリセーフだね。それでも旧社会主義国家の影の姿には虫唾が走り、不愉快になる場面もあったなあ。
そんな社会でエリートだった主人公は、様々な出来事からこの国の姿に気づいてしまう。 幸せそうに見えた夫婦も、妻の本音は・・・そしてまた乗り越えていくのだな。
他にも大脱走のアクションものなどいろいろな要素もちりばめられていて、飽きることのない構成だね。

最後は・・・もうちょっと違うほうがよかったかもしれないけど・・・