天竺熱風録



田中 芳樹

太宗皇帝の命を受け、王玄策は、長安から遙かインドに向かう。苦難の旅路を経て、ようやく辿り着いたマカダ国では、政権を奪った悪王が人びとを苦しめていた。義に厚い好漢は怒りに震える。だが彼に頼るべき兵はない。国際政治に通じた王玄策は、軍勢を得るため、ある計略にすべてを賭けた。その知力で、強大な敵を破った中国史最強の文官、鮮烈に登場。

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読み始めて驚きの巻。田中先生の中国物は最近では珍しくないのだが、驚いたのは物語の語り口。昔聞いたことがある講談師風だね。これは楽しく読める。だいたい昔の話しなんて、実際には何があったかわからずに作者が創作で書いているもの。もっともらしく書いてあるよりこれも面白い。

おいらが昔に話しを聞いた講談師、女性のかたで宝井琴桜さんといったっけ。話し自体は面白いのだが、「あなた、それを見ていたのかい・・・」と正直腹の中では思っていたよ。そんなおいらの視線に気づいたのか何なのか、「講談師、見てきたように物を言い」と自分でおっしゃり、更には「見てもいないことをもっともらしく話しするのがこの仕事なのです」とも言っていて、考えていることを見透かされているようで笑ってしまったよ。

田中先生、書きかけのシリーズはいったいどうなっているんでしょうね・・・