海の史劇



吉村 昭

祖国の興廃をこの一戦に賭けて、世界注視のうちに歴史が決定される。ロジェストヴェンスキー提督が、ロシアの大艦隊をひきいて長征に向う圧倒的な場面に始まり、連合艦隊司令長官東郷平八郎の死で終る、名高い「日本海海戦」の劇的な全貌。ロシア側の秘匿資料を初めて採り入れ、七カ月に及ぶ大回航の苦心と、迎え撃つ日本側の態度、海戦の詳細等々を克明に描いた空前の記録文学

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バルチック艦隊についてはみなさんご存知だろう。日露戦争当時、日本の連合艦隊と決戦すべく、ロシアから旅順、ウラジオストックを目指して長征してきた世界最強の艦隊だね。
バルト海のリバウ軍港からアフリカの喜望峰をまわり東洋まで七ヶ月という、なんとも凄まじい長旅で、これは想像を絶するような過酷な旅であったことだろう。ここまでの長い旅は、おいらの記憶の中でも、『宇宙戦艦ヤマト』くらいしか他に類を見ないね。

現在放映している『坂の上の雲』でも、クライマックスとして日本海海戦のシーンが用意されていることであろう。映像の中で『東郷ターン』をどのように表現しているか楽しみである。ただし放映は2年後だと思うが。

さて、この本は、さすが吉村昭さんだと唸ってしまうね。膨大な資料の中から、よくもここまでわかり易く書けるものだと思います。

後半部分の、小村寿太郎とウイッテの和平交渉のバトルについては『ポーツマスの旗』に詳しい。順序からすればこちらのほうを先に読んでからのほうがよかったね。

ホント楽しく読めました。