ひとり旅



吉村 昭/著


平成18年、惜しまれつつ亡くなった著者の珠玉のエッセイと、名作「桜田門外ノ変」や「生麦事件」の創作秘話を収録。吉村文学のエッセンスが詰まった一冊。

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吉村さんは現地に何度も足を運び、史料を徹底的に調べて書き上げるという。長崎は『戦艦武蔵』や『ふぉん・しいほるとの娘』などのため、100回以上も訪れたのだな。
現地へ訪れ、図書館などで徹底的に資料を調べ、関係者に話を聞き、夜はその土地の酒と肴を楽しんだのですね。
アフリカのルポの本の感想の時にも書いたことがあるけれど、目の前のパソコンでちょこっと検索して調べてわかった気になっている人とは天と地ほどの違いがあるね。資料を目にして、自分なりに推理したり感じる力は本当に大事だと思うよ。

吉村さんも小説の冒頭の部分には、ずいぶん気をつかっているとのことだがなるほどな。おいらの蔵書の『零式戦闘機』も、当時最新鋭の零戦を牛車でノロノロ運んだシーンで始まるし、『戦艦武蔵』にしても、目隠しのために棕櫚のすだれを四方にはりめぐらし、棕櫚が材料不足になったところから始まっていて、強烈な印象から始まったなあ。